若干重いネタ

世界はどこに向かうのか。
以降に挙げたのは、昔、結構な衝撃を受けたこの本のイントロ。最近よく頭を過ります。
私は楽天的悲観主義者ですからね。思い込みもあるかもしれませんが。世の中ちょっと嫌なムードになってる気もします。

長いですが、興味があればどうぞ。若干重いネタです。
しかもオチも駄洒落もありません。
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 想像してみて欲しい。今は1900年の夏。あなたは当時世界の首都だったロンドンに暮らしている。この頃、ヨーロッパが東半球を支配していた。ヨーロッパの首都の直接支配下に置かれないまでも、間接統治すら受けない場所など、地球上にはまずなかった。ヨーロッパは平和で、かつてない繁栄を享受していた。実際、ヨーロッパは貿易と投資を通じてこれほど深く依存し合うようになったため、戦を交えることはできなくなった、あるいはたとえ戦争を行ったとしても、世界の金融市場がその重圧に耐えきれなくなり、数週間のうちに集結する、といった説が大真面目に唱えられていた。未来は確定しているように思われた。平和で繁栄したヨーロッパが、世界を支配し続けるのだ。

 今度は、1920年の夏に思いを馳せて欲しい。ヨーロッパは大きな苦しみを伴う戦争によって引き裂かれていた。大陸はずたずたにされた。オーストリア・ハンガリー、ロシア、ドイツ、そしてオスマンの帝国はことごとく消え去り、何年も続いた戦争で数百万人の命が失われた。戦争がようやく終わったのは、アメリカが100万の兵を送り込んだときである。軍隊は来たときと同じように唐突に去っていった。共産主義がロシアを席巻したが、この先永らえるかどうか定かではなかった。アメリカや日本など、ヨーロッパ周縁部に位置する諸国が、いきなり大国として浮上した。だが一つだけ確かなことがあった。不利な講和条約を押し付けられたドイツが近いうちに再び浮上するはずがないということだ。

 さて次は1940年の夏まで飛んでみよう。ドイツは再浮上したどころか、フランスを征服し、ヨーロッパを支配していた。共産主義は永らえ、ソビエト連邦は今やナチス・ドイツと同盟を結んでいた。ドイツに立ち向かう国はイギリスただ一国のみで、まともな人の目には、戦争はもう終わっているように思われた。ドイツの千年帝国があり得ないとしても、少なくとも今後100年間のヨーロッパの命運は決まったようなものだった。ドイツがヨーロッパを支配し、その帝国を継承するのだ。

 続いて、1960年の夏だ。ドイツは5年とただずに敗れ、戦争で荒廃していた。ヨーロッパはアメリカとソ連によって占領され、二分された。ヨーロッパの帝国は崩壊の途にあり、その継承者の座をめぐってアメリカとソ連が争っていた。アメリカはソ連を包囲し、その圧倒的な核軍備を持ってすれば、数時間のうちにソ連を全滅させることもできた。アメリカは世界の超大国として躍り出た、すべての海洋を支配するアメリカは、核戦力をバックに、いかなる国にも条件を指示し、それに従わせることができた。ソ連に望めるのは、せいぜい膠着状態に持ち込むことだった。
ーーーソ連がドイツに侵攻し、ヨーロッパを征服でもすれば話は別だが。誰もが想定していたのは、そんな戦争だった。また内心では誰もが狂信的な毛沢東の中国を、いま一つの危険と見なしていた。

 次に1980年の夏に身を置いてみよう。アメリカは七年間続いた戦争に敗れた。相手はソ連ではなく、共産主義国の北ベトナムだった。アメリカは自らの凋落を、自他共に認めていた。アメリカはベトナムから追われ、続いてイランからも追われた。イランではアメリカが支配を明け渡した油田が、ソ連の手中に落ちようとしているかに思われた。またアメリカはソ連を封じ込めるために、毛沢東の中国と手を組んでいた。アメリカ大統領と中国国家主席が、北京で友好会談を行なったのだ。急速に勢力を増していた強大なソ連を阻止できるのは、中国との同盟しかないように思われた。

 それでは今が2000年の夏だったら、と想像して欲しい。ソ連は完全に崩壊した。中国は共産主義とは名ばかりで、実質は資本主義化していた。北大西洋条約機構(NATO)は東欧諸国だけでなく、旧ソ連諸国にまで拡大していた、世界は豊かで平和だった。地政学的配慮は経済配慮の二の次にされ、残る問題といえば、ハイチやコソボといった手の施しようのない国の地域問題だけだと思われた。

 そしてやって来たのが、2001年9月11日である。世界は再び覆された。
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「100年予測/ジョージ・フリードマン」の冒頭にある文章です。
経済書やビジネス本、昔はかなり読みました。紙媒体は既に卒業し、今はデジタルで読むことも多いのですが、この本だけは処分できずに置いてあります。
15年前に読んで、結構な衝撃を受けました。20年の先ですら見通せないという事実もさることながら、この繰り返しが、自分たちの生活にも影響を及ぼしにいずれやってくる、という不安を感じた覚えがあります。今も感じています。

2024年を2000年時点に戻って想像してみてください。2040年を想像してみてください。

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